コロナの5類移行の影響が大きかったのか、特別な制限を設けずにオフラインイベントが再び開催できるようになり半年ほどが経ちましたね。コロナはこの丸3年で「これまで常識だった人と人が集まる場所」を徹底的に少なくしてしまったという体感があります。運営の中心人物が高齢化している地方の市町村などでは地元の集まりやお祭りのノウハウが途切れてしまい、イベント自体がなくなったという事例も目にします。

私は普段、インターネットの技術に関連したイベントを仕事でもプライベートでも企画・運営しているんですが、この半年で強く感じていることがあります。それは「オフラインのイベント経験者が少ない」ことと「オフラインのイベントに関わるノウハウが継承されていない」ということ。どうにかしていきたいとモヤモヤ〜と考えていた矢先。

同じ会社の同じチームで一緒に働いているShoco Satoさんから「今度、技術カンファレンスの運営についての本を書くことにしたんですが、共同執筆しませんか?」と誘ってもらったので秒で快諾しました。その時の様子がこちら。


いま見返すと丁寧な説明はなかったですね!URLだけポンとでした。「へぇ、タイトル決まった本に後のりで執筆することってあるんだ!」という驚きが残ってます。

なぜすぐに快諾できたのかというと、Shocoさんは一番信頼している仕事仲間で、課題意識が共通していて、最もイベント運営を一緒にやっている仲。誘われた時点で「これは間違いなくよいものになるだろう」という直感があり、11月12日にオフラインで実施される技術書典15というイベントを目標に一気に書き上げました。(誘われた時点ですでに全てのスケジュールが決まっていた!) 

カンファレンスの運営は、普段から取り組んでいて最も時間をかけていることなので執筆はスラスラ〜っとスムーズに進行したのが自分でも驚きです。本の名前は「技術カンファレンスのマスターガイド:企画から運営までの完全手引き」というもの。 あらためて本書について紹介すると、こういった背景・目的で書かせていただきました。
この本は、普段の仕事や趣味でイベントや大規模なカンファレンスの運営をしている筆者二人が

  • オンラインイベントが主流となる中でオフラインやハイブリッドイベントの運営ノウハウを持つ人々が減少している現状をなんとかしたい
  • オフラインやハイブリッドイベントの魅力や運営の秘訣を伝え、心と心を直接つなぐリアルなコミュニケーションの場を創り出せる人を増やしたい
  • 長年イベント運営をしてきたノウハウを余すところなく残したい

  • といった課題感や危機感を持ち、共同執筆したものです。これから技術カンファレンスを企画・運営する方や、イベント運営のベストプラクティスやトラブルシューティングの方法を学びたい方など、カンファレンスの運営に関わる全ての皆さんにお届けしたいという情熱を持って書き上げました。
    本書は「カンファレンス運営に関わる方」という、世間的には数が少ない方向けの内容となっています。一般の方にとっては必要ではない内容かもしれませんが、必要な方には深く刺さりつつ、カンファレンス運営の第一歩であり、運営陣にとって手放せないチェックリストになるくらいにカンファレンス運営について網羅できたのではと感じています。

    また、冒頭の「はじめに」で私はこのように書きました。
    本書ではイベント運営をしたことがないという方に向けて、イベント運営がどういったことをやるのか記し、全体像を把握することで次に何をすればよいか理解し、各ポイントでどういったことに気をつければよいのかをお伝えできればと思います。
    「グイグイやるなんて自分には無理だ」と思っている方に向けて、実際に何をするかとあわせ、イベント運営がどのような態度で関係者とコミュニケーションすればよいかも具体的な事例を交えてご紹介していきます。一人でも多くのイベント運営が円滑に、かつ効果的に、イベントを開催できる一助となれば幸いです。
    執筆は章ごとに担当を決めて、ある程度それぞれが得意な領域で分担をして執筆してお互いにレビューをしあって仕上げていくスタイルです。書き上げてからは、デザインや入稿データの作成やブースの準備などはShocoさん、「大規模カンファレンスの失敗事例」を聞いて仕上げたり業界で近しいことをしている皆さんに事前に読んでいただいて書評をもらってまとめるのを私がやったりと、こちらもうまく役割分担ができました。

    「大規模カンファレンスの失敗事例」のパートでは普段から情報交換させてもらったり、お互いのイベントに参加しあって切磋琢磨している(と私は一方的に思っている)皆さんに寄稿いただきました
  • 一般社団法人 Japan Node.js Association 代表理事の古川さん
  • JPA(Japan Perl Association)代表のkarupaneruraさん
  • 一般社団法人日本Rubyの会代表理事、RubyKaigiオーガナイザーの高橋征義さん
  • 「try! Swift Tokyo」運営のjollyjoesterさん
  • DroidKaigiの代表理事のmhidakaさん
  • 皆様のご協力により、本書はより実践的で価値ある内容となりました。ありがとうございました。

    そんなこんなで執筆はスケジュールどおりに進行し、プロモーションも必要十分に出来て( #技完ガイド書評 がわかりやすいです、ご協力いただいた皆さんにウルトラ感謝!)  技術書典15ではありがたいことに沢山の方に足を運んでいただき、多くの皆さんに手にとっていただくことが出来ました。


    224ページという厚さ、3,800円という金額に会場では「薄い本とは…?」「他の本も買いたいのに… でも見本読んだら買うしかないじゃないですか!」等、色々と反応をいただきました。ありがとうございました。

    会場で売り子としてブースに立ち、一般来場者やサークル参加の皆さんと話す機会がありましたが「オンラインだけで始めたイベントをちょうどオフラインでやろうと思ってて」とか「ボランティアスタッフだけしかやったことないけど運営全体のことを知りたくて」など色々と話せたので、あぁ今のタイミングで形に残せてよかった、間違いなく必要とされていた内容だったんだなと、と強く感じました。

    特にオッ!となったのは「学生が参加する、学生が運営主体のイベントをどうしていこうか悩んでいたのでありがたい、そして学生半額なのが最高に嬉しいです」と学生の方に言われたこと。そうなんです。「ノウハウを伝えたい、残したい」というのが執筆のスタートなので、学生の方に一番届けたいと思っていたんです、なので半額に設定しました。その後、会場内での口コミで「学生半額と聞いて…」と言っていただけたのが嬉しかったです。

    今回、物理の本は技術書典の会場優先という形で準備をして、大変ありがたいことに会場で予定数の頒布を終えました。今後、物理の本については増刷や販路の拡大など可能性はありますが、技術書典15の会期が終わった後に検討したいと思っています。

    なお、電子版については技術書典15のオンラインマーケットで11/26(日) まで購入が可能です。電子版についても今後の頒布については現状未定ですので、興味をお持ちいただいた方は是非こちらから確認していただけるとありがたいです。

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    ノウハウをどんどん共有して、できる人が増えて、手法は洗練されていき、さらに業界がよくなっていく。そんなことを夢想しながら準備を進めた本書。イベントの数だけ運営の数もあるので、本書の内容が必ずしも正解というわけではありません。イベント運営経験者にとっては異論もあるかもしれません。しかし、私の15年以上のノウハウは確実に盛り込んでおきました。売り子の時に「企画の立て方、関係者の巻き込み方、会議の進め方、打ち上げ会場の選び方まで書いてあります」と説明をしたように、みっちり詰め込みました。

    技術カンファレンス運営という、刺激的で、大変で、苦しくて、プレッシャーばかりで、それでも楽しい世界。本書をきっかけに運営として一緒に盛り上げていってくれる人が一人でも増えたり、興味をもってくれる方が増えたら著者冥利に尽きます。一緒に運営やろう!



    Shocoさんの記事はこちら
    → 【技術書典15】に出展、 新刊「技術カンファレンスのマスターガイド」を販売します

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